Micronが過去最高の業績を記録—HBMが牽引するAI需要

米国のメモリ大手であるMicron Technologyは、2026会計年度第4四半期決算において、驚異的な成長を遂げたことを報告しました(The Next Platform)。売上高は前年同期比で4.8倍の542.3億ドルに急増し、営業利益も約12倍となる437.5億ドルを記録しました。

純利益も同様に12倍の377億ドルに達し、売上高に対する純利益率は69.5%という高水準です。これは、HBM(高帯域幅メモリ)を中心としたDRAM市場の活況が大きく寄与していると考えられます。

HBMスタックDRAMの収益性は、情報技術の商業史における過去60年間で最も高い製品になる可能性があります。

現在のAI革命は、NVIDIAやAMDといった企業のGPUに不可欠なHBMなしには実現しなかったとされており、Micron、Samsung、SK Hynixといったメモリメーカーの収益は、かつてのIBMメインフレームの成長をも凌ぐ勢いです。この急成長は、メモリ市場が新たな黄金時代を迎えていることを示しています。

DRAMとNANDフラッシュの成長—需要過多が続く市場

今回の決算では、DRAM事業の売上高が4.4倍の397.7億ドルに、NANDフラッシュ事業の売上高が6.2倍の141億ドルに増加しました(The Next Platform)。特にNANDフラッシュは成長率でDRAMを上回りましたが、売上規模ではDRAMが依然として主力です。

Micronは現在、約734.5億ドルの手元資金を保有しており、これは約4つの工場を建設できるほどの金額ですが、設備投資には107.7億ドルしか費やしていません。これは、過去の景気循環から学び、過剰な供給による市場のバブル崩壊を避けようとするメモリメーカー各社の戦略を示唆しています。

項目 前年同期比(倍) 金額(億ドル)
売上高 4.8 542.3
営業利益 約12 437.5
純利益 12 377.0

メモリメーカーは、OPEC諸国が原油市場で行うように、供給を調整することで高価格と高利益を維持しようとしているようです。実際に、MicronのCEOは、RAMの供給不足が2028年以降も続く可能性が高いと警告し、「顧客は今年よりもはるかに高い価格を支払うことになる」と述べています(The Register)。

高度なパッケージング技術がもたらす価値

HBMの成功は、高度なパッケージング技術がいかに重要であるかを改めて浮き彫りにしています(The Next Platform)。HBMは、複数のDRAMダイを積層し、より広い帯域幅と低い消費電力を実現する技術で、AIワークロードに不可欠です。

この技術革新が、従来のDRAMにはない高い付加価値を生み出し、結果として「金よりも15倍の価値がある」とまで言われるような収益性をもたらしています。メモリメーカーは、このHBMのような高付加価値製品に注力することで、利益率を最大化しようとしていると見られます。

クリーンルームのDRAM工場をオンラインにする難しさから、NANDフラッシュの方が設備投資額あたりの増産が容易です。

この傾向は、今後のメモリ市場においても、単なる容量の拡大だけでなく、より高性能で特殊な用途に対応する製品開発と、それを可能にする製造技術が重要になることを示唆しています。

エンジニア目線で見ると:高価格は避けられないが選択肢は限られる

今回のMicronの決算は、AIインフラを構築するエンジニアや企業にとって、メモリコストが今後も高止まりすることを明確に示唆しています。HBMの需要は供給を大きく上回り続けており、特にHBM4のような次世代品はプレミアム価格で取引される状況が続くでしょう。

これは、自作PCでローカルLLMを動かしている私のような個人エンジニアにとっても、RTX 3090のような高性能GPUの価格がさらに高騰する要因になりかねないと感じます。高性能メモリの確保は、AI開発における重要な課題の一つであり続けるのではないでしょうか。

また、メモリメーカーが過去の景気循環から学び、意図的に供給量を調整しているのは非常に興味深い点です。これは、メモリ価格が需給バランスだけでなく、メーカーの戦略によっても大きく左右されることを意味します。GCPのCloud RunやBigQueryをメインで使っている私にとって、クラウドプロバイダーが提供するメモリ価格にも、この市場動向が反映される可能性が高いです。

高性能なインスタンスほどHBMのような高価なメモリが使われるため、利用コストの計画には注意が必要だと考えます。AWSやAzureでも同様の傾向が見られるでしょう。オープンソースのLLMやマルチモーダルモデルの開発を進める上で、メモリコストは避けて通れない部分であり、限られた予算の中でいかに効率的にリソースを確保するかが、より一層重要になるはずです。