中国AIチップ市場、HuaweiがNvidiaを上回ったとの発表

2026年9月30日、中国Huaweiの輪番会長であるエリック・シュー氏が、同社のAIチップ「Ascend(アセンド)」シリーズのNPU(Neural Processing Unit)が、中国国内市場でNvidiaの市場シェアを超えたと主張しました(出典)。Nvidiaの中国での正確な市場データを収集するのは難しいとしながらも、Huaweiが持つデータに基づいてこの結論に至ったと述べています。

「AscendはNvidiaを上回りました。中国の人々は切迫感を抱いており、製品へのアクセスを他者に決められる未来を受け入れません。」

この背景には、トランプ政権(当時)が中国向けAIアクセラレーターの輸出規制を導入したことがあります。2025年4月にNvidiaとAMDの中国向けアクセラレーターに新たなライセンス要件を課したものの、同年夏には規制を緩和し、2025年末にはNvidiaのより高性能なH200シリーズの販売も一部承認するに至りました。しかし、この一連の動きが中国国内での「自給自足」への機運を急速に高めたと言えるでしょう。

米国輸出規制の反転が招いた中国の「自給自足」推進

米国の輸出規制は一時的に緩和されたものの、初期のH20sなどのブロッキングが中国政府に警鐘を鳴らし、国内のデータセンター運営者に対し、外国製アクセラレーターから国産品への移行を促す動きが活発化しました(出典)。NvidiaはH200アクセラレーターの出荷を再開しましたが、その売上はデータセンター収益の1%未満にとどまったと報告されています。この状況についてシュー氏は、「我々のチップはNvidiaほど高性能ではないかもしれないが、少なくとも供給は保証されている」と強調しました。

項目 Nvidia (規制前) Nvidia (規制後) Huawei Ascend
性能 高性能 (H200シリーズ等) 一部高性能品も販売可 Nvidiaには劣る
供給保証 規制により不確実性 規制緩和も不確実感残る 供給は確実
中国政府のスタンス 外国製から国産への移行推奨 外国製から国産への移行推奨 自給自足推進

シュー氏はまた、「中国政府、国内産業、そしてHuaweiにとって、チップおよび半導体バリューチェーン全体の完全な自給自足へと向かう道は疑いようがありません」と述べ、国家的な取り組みとして半導体産業の強化を進める姿勢を明確に示しています。

ソフトウェアエコシステムの進化が国産チップを後押し

Huaweiの最新アクセラレーターは、単体性能ではNvidiaやAMDに及ばないものの、スケールでその差を補う戦略をとっています。現在、Huaweiは256,000枚のAtlas 950 SuperClusterを導入中で、新しいアーキテクチャは数兆パラメータを持つモデルのトレーニングおよび推論に対応し、最大100万個のNPUにまでスケールできるよう設計されているとのことです(出典)。

HuaweiのHiSiliconのチーフサイエンティストであるLiao Heng氏は、「Ascendが直面した最初の障壁はハードウェア自体ではなく、主にエコシステムの障壁だった」と語っています。これはNvidiaのCUDAエコシステムに代表されるソフトウェアの優位性、いわゆる「CUDAの堀」を指すもので、他の競合チップメーカーも同様に直面してきた課題です。

しかし、過去18ヶ月間で状況は劇的に変化し、DeepSeekのような企業がHuaweiのチップでの開発を進めるなど、ソフトウェアパラダイムの変革が国産チップへの移行を容易にしているようです(出典)。実際、DeepSeekとHuaweiは、Nvidiaエコシステムへの依存を減らすためにオープンソースのAscend AIプログラミングツールをリリースしています(出典)。

エンジニア目線で見ると:自給自足への強い意志とエコシステムの重要性

今回のHuaweiの発表は、米中間の技術覇権争いが中国国内の産業構造に与える影響の大きさを改めて示していると感じます。特に、米国からの輸出規制が一度緩和されたにもかかわらず、中国政府が国産チップへの移行を強く推進している点は注目すべきです。これは、単なる経済的な問題ではなく、国家安全保障と技術主権という、より根源的な動機に基づいているのではないでしょうか。

私たち開発者にとっては、Ascendのような新しいNPUの台頭は、将来的に選択肢が増えるという点で歓迎すべき動向です。特に、オープンソースのエコシステムが整備されつつあることは大きな進展です。以前はCUDAに完全に依存せざるを得ませんでしたが、AscendがPyTorchなどの主要なフレームワークをサポートし、開発者が使いやすいツールを提供できれば、移行コストはかなり低減されるでしょう。

GCPを主軸に使っている私としては、もしAscendがCloud Runのようなサービスで利用できる日が来れば、より柔軟なインフラ選択肢が生まれると期待しています。当面は中国市場にフォーカスされるようですが、将来的に国際市場への展開があれば、私の個人プロダクトでもPythonバインディングを通じて試してみたいと感じます。しかし、供給の安定性は重要視するものの、絶対的な性能やエコシステムの成熟度、特にセキュリティ面での継続的な検証は必須であると考えます。