SiFive「BigSky SF-2U870」—データセンター向けRISC-V開発の先駆け
SiFiveは、RISC-Vベースのデータセンター向け開発プラットフォーム「BigSky SF-2U870」を、2026年8月25日に開催されたHot Chips会議で披露しました。このプラットフォームは、オープンな命令セットアーキテクチャであるRISC-Vへのソフトウェアポーティング、ワークロード最適化、システム検証を加速するために特別に設計されています。SiFiveによると、すでにハイパースケーラー、ソフトウェア開発者、主要なSoCベンダーを含むリード顧客がBigSkyシステムでワークロードを実行しているとのことです(出典)。
「RISC-V in the datacenter isn't a distant aspiration any more, it is happening right now.」—SiFive会長兼CEO Patrick Little氏(出典)
これはかなり衝撃的なニュースです。これまでRISC-Vは組み込み系やエッジデバイスでの活用が主でしたが、いよいよデータセンターという本丸に本格的に食い込もうとしているのですね。私の個人プロダクトでも、いつかRISC-Vが選択肢に入る日が来るかもしれません。
BigSkyの主要スペックと「世界初」の主張
BigSky SF-2U870は、以下の主要スペックを備えています(出典):
- CPU: SiFive P870-Dコア × 32(2 GHz動作)
- メモリ: 256 GB DDR5
- ストレージ: 7.68 TB NVMe SSD × 2
- ネットワーク: 10/25 Gbps OCP準拠ネットワークアダプター
SiFiveはこれを「世界初のエンタープライズグレード、ラックマウント型2U RISC-Vサーバー」と謳っています。しかし、中国のSophgoなど、あまり知られていない企業も2Uラックマウント型RISC-Vサーバーを販売しているため、この主張の検証は難しい状況です。ただし、Sophgoは米商務省のエンティティリストに掲載されていると理解されています(出典)。
| 項目 | SiFive BigSky SF-2U870 | 一般的なx86サーバー(例) |
|---|---|---|
| CPUコア | 32コア(P870-D) | 16〜64コア(Intel Xeon/AMD EPYC) |
| ISA | RISC-V | x86-64 |
| メモリ | 256GB DDR5 | 256GB〜1TB+ DDR5 |
| ストレージ | 7.68TB NVMe SSD ×2 | 数TB NVMe SSD 〜 数十TB HDD |
| フォームファクタ | 2Uラックマウント | 1U/2Uラックマウント |
ソフトウェアエコシステムの構築とNVIDIA CUDAの統合
SiFiveは、ハードウェアだけでなくソフトウェアエコシステムの構築にも注力しています。特に、LinuxディストリビューターであるCanonicalとRed Hatとの提携は重要です。Red HatのテクノロジーストラテジストであるBrian Harrington氏は、「RHEL 10がSiFiveのBigSkyプラットフォーム上で動作することは、単なる検証ではなく、『理論的な段階』から『実運用レベルの現実』への移行を証明するものだ」と述べています(出典)。
さらに、GPU大手のNVIDIAとの連携は、AI・LLM分野でのRISC-Vの可能性を大きく広げるでしょう。SiFiveはNVIDIAのCUDAソフトウェアスタックのRISC-Vへのポーティングと、NVLink Fusion高速インターコネクト技術の将来的なSiFiveデザインへの統合を進めています。そして、既にBigSkyシステム上でCUDAが動作していることを発表しました(出典)。
これは、将来的にSiFiveベースのシステムがNVIDIA GPUクラスターを活用したAIサーバーとして、LLMワークロードを処理できるようになることを意味します。RISC-Vハードウェア上でこのような機能が実現するのは「前例がない」とSiFiveは主張しており、これは私のようなローカルLLMを動かすエンジニアにとっても夢のような話ではないでしょうか。
いつかStable DiffusionがRISC-V上でサクサク動く日が来るかもしれません。現状では限定的な数量での提供ですが、この進展はデータセンター市場におけるRISC-Vの存在感を確固たるものにするはずです。
Armの経験から学ぶ—エコシステムとハイパースケーラーの重要性
Armアーキテクチャがx86の代替としてサーバー市場に参入するまでには、長い年月と多大な投資が必要でした。開発システムをコーダーに提供し、ソフトウェアポーティングを支援することで普及を試みましたが、真のブレイクスルーはAmazonのようなハイパースケーラーが、自身の要件に合わせたカスタムプロセッサを求めたことから生まれました(出典)。
SiFiveもこの教訓を活かし、単に強力なハードウェアを提供するだけでなく、主要なソフトウェアツールのRISC-Vアーキテクチャでの動作を可能にすることに注力しています。CanonicalやRed Hat、そしてNVIDIAといった重要なプレイヤーとの連携は、まさにArmが辿った道のりを効率的にショートカットしようとしているようにも見えますね。
特にNVIDIAとの協業は、AI時代において非常に戦略的な一手だと感じます。BigSkyが、今後のRISC-Vデータセンターエコシステムを形成する上で重要な役割を果たすことは間違いないでしょう。