AI需要がメモリ価格を押し上げる—ハイパースケーラーの投資動向
2026年8月25日に開催されたHot Chips 2026カンファレンスにて、半導体市場調査会社Objective Analysisのジェネラルディレクター、ジム・ハンディ氏がDRAM、HBM、フラッシュメモリ市場の現状について詳細な分析を発表しました(出典)。現在のメモリ価格高騰の最大の要因は、ハイパースケーラーやクラウドプロバイダーが生成AIモデルのトレーニングと推論のために莫大な設備投資を行っている点だと指摘されています。これはHBMやGPU/XPU市場だけでなく、DRAMやフラッシュ市場全体に波及しています。
「DRAMとフラッシュの価格は"成層圏"に達しており、大規模な需要ショックが供給不足と正面衝突しています。」
これはかなりの衝撃的なニュースだと感じます。AIの進化が半導体市場にこれほど大きな影響を与えているとは、改めて認識させられます。特に、自宅でStable DiffusionやローカルLLMを動かす身としては、GPUだけでなくメモリ価格の動向は非常に気になるところです。
ハンディ氏の分析によると、2021年初頭から現在までのAI関連投資額を見ると、米国の主要4社(Amazon Web Services、Google、Microsoft Azure、Meta Platforms)が圧倒的な支出を行っています。中国のハイパースケーラーであるAlibaba Cloudの投資額は、これら4社と比較するとほとんど目立たない状況です。AIを収益化できる企業が資本投資をせずとも利益を上げられる状況が生まれていると述べられています。
| 企業/カテゴリ | 2021年〜2026年Q2のAI関連投資(大まかな傾向) |
|---|---|
| Amazon Web Services | 最大規模の投資 |
| 大規模な投資(検索、広告、クラウド部門) | |
| Microsoft Azure | 大規模な投資 |
| Meta Platforms | 大規模な投資 |
| Alibaba Cloud | 米国大手と比較して少ない |
| Apple | AI活用はするが、投資額は過去5年で減少 |
消費者向けDDR5価格も高騰—自作PCへの影響
AI需要によるメモリ価格高騰は、データセンター向けHBMやDRAMだけでなく、一般消費者向けのDDR5 RAMにも影響を与えています。Tom's Hardwareの報道によると、32GBのDDR5 6000 RAMの価格が400ドルに達しており、これは過去の最低価格から400%以上の高騰とのことです(出典)。
「DDR5 6000 RAM 32GBが現在400ドルとなっており、最新の価格高騰はDIY PC構築をこれまで以上に手の届きにくいものにしています。」
正直、ここまで来たかという感じがします。私の自作PCに搭載しているDDR5も、今後アップグレードを検討する際にはこの価格高騰が大きな障壁になりそうです。メモリやSSDの価格動向は常にチェックしていますが、このペースで上がるとは予想していませんでした。
ハンディ氏は、フラッシュ、DRAM、HBMが同じ製造ラインで作られていることを説明し、「そのため、DDR価格もNANDフラッシュ価格も高騰しており、巨大な収益を生み出している」と述べています(出典)。メモリはコモディティ製品であるため、供給が不足するとメーカーは価格決定権を強く持ち、需要家はメーカーを選べない状況に陥るとのことです。これは市場の基本原理ですが、改めてその影響の大きさを感じます。
2022年後半からの市場の変化と今後の予測
ハンディ氏のデータによると、2022年後半から2023年初頭にかけてメモリとフラッシュの市場は一時的に低迷していましたが、皮肉にもこの時期に生成AIのブームが本格化し始めました。それ以降、メモリメーカー各社の収益は右肩上がりに急増しています(出典)。
「生成AIブームが続けば、少なくとも2030年まで成長し、それまで不足が続くと予想されています。」
各社の予測では、生成AIの需要は少なくとも2030年までは成長を続け、それに伴いメモリの供給不足も続くと見られています。この状況が続けば、メモリメーカーの収益は直線的に上昇していく可能性が高いと推測できます。
現在の為替レート(JPY/USD)も海外製品の価格に影響するため、開発者としてはさらに厳しい状況だと感じます。この高騰がいつまで続くのか、非常に注目しています。
AIエージェントの登場も、CPUとDRAM、フラッシュの需要をさらに押し上げると予測されています。タスク実行のために生成される大量のPythonコードを実行するサンドボックスや、アプリケーションのモダナイゼーション・新規開発のためのコード生成など、AIの活用領域が広がるほど、それを支えるインフラへの要求も高まるためです。私の個人プロダクトでもAIエージェントの活用を考えているので、この動向は他人事ではありません。