AIブームが加速させるデータセンターの水需要

米議会調査局(CRS)の最新レポートによると、2023年の米国内データセンターが使用した水量は約170億ガロン(約643億リットル)に上り、これは2014年の水使用量の3倍にあたると推計されています(出典)。この急激な増加は、OpenAIが2022年末にChatGPTをリリースして以来の生成AIおよび大規模言語モデル(LLM)への需要が主な要因とされています。新しいデータセンターの多くはAI専用ハードウェアを搭載しており、これらのハードウェアは従来のインフラと比較してはるかに高い電力を消費するため、冷却ニーズも増大しています。

2023年の米国内データセンターの水使用量は約170億ガロンに達し、これは2014年の3倍にあたる。

これはかなり衝撃的な数字です。AIの進化がこれほど急速にインフラに影響を与えているとは、正直ここまで来たかという感じがします。私の個人プロダクトでもLLMを積極的に活用していますが、その裏側でこれだけの水資源が消費されていると聞くと、技術の進歩と環境負荷のバランスについて深く考えさせられます。

CRSのデータでは、電力生成による間接的な水消費がデータセンター全体の水使用量の80%以上を占めると指摘されています。一方で、施設内で直接冷却に使用される水は、米国の総水消費量の約2%と比較的少ない割合です。

水消費の分類 割合(データセンターの総水使用量) 米国の総水消費量に対する割合
間接水消費(電力生成) 80%以上 不明
直接水消費(施設内冷却) 20%未満 約2%

冷却技術の選択と水資源への影響

データセンターの冷却システムは、施設規模、立地、IT機器の熱負荷に応じて多様な技術が用いられます。CRSは具体的な冷却システムの詳細には深く触れていませんが、液体冷却システムが空冷システムよりも効率的である可能性があることを示唆しています(出典)。しかし、小規模施設ではコスト効率が悪い場合もあるようです。

冷却システムには水消費と電力使用量のトレードオフが存在します。

  • 蒸発冷却システム: エネルギー効率は高いが、水を大量に消費する。
  • 空冷チラーや水を使わないシステム: 水消費は少ないが、エネルギー効率が低い傾向にある。

どちらのシステムが選ばれるかは、立地や気候条件に大きく左右されるようです。データセンターは主に自治体の水道システムから水を引き入れており、CRSの推計では米国の施設への給水の97%が自治体水道システムに依存しています。他にも、処理済みの排水や地表水・地下水からの直接取水も行われています。

不透明な水使用データと連邦政府の役割

データセンター業界の水使用量に関する包括的なデータは、現状では限られています。自治体と事業者間の給水サービス契約には、情報開示を制限する条項が含まれる場合があるため、業界固有の、あるいは施設固有のデータが入手困難な状況です(出典)。

水使用データの収集と報告は州レベルの機関が行うことが多く、連邦政府はデータセンター業界の水使用状況を体系的に評価していません。これは、水資源の管理が州レベルの責任であることに一部起因します。

昨年報じられた事例では、水資源科学者がアマゾンウェブサービス(AWS)を提訴し、バージニア州北部での水使用量について誤解を招く情報を公開したと主張しています。これは、情報公開法(FOIA)に基づき水道事業者から入手した請求書や水消費記録が根拠となっています(出典)。

このような状況を見ると、GCPを主軸に利用している私としては、各クラウドプロバイダーが自社の水使用量や環境負荷に関するデータをより透明性高く開示していくべきだと強く感じます。開発者としても、どのクラウドがよりサステナブルな運用をしているのか、明確な指標が欲しいところです。

連邦政府の資金提供により、バージニア工科大学の研究者らが「United States Water Withdrawals Database」を公開し、42州の水取水データと推計をまとめる取り組みも進められています。これは公衆給水、産業、灌漑などの情報を網羅しています。