AIと人間が協調する脆弱性発見フレームワーク「AVDH」

Google Threat Intelligence Groupは、AIの悪用によるデータ盗難や恐喝のリスクが増大する中で、防衛側が攻撃側よりも迅速に対応できるよう、新しいアプローチを導入しました。

「AIモデルと深く構造化された人間主導のオーケストレーションレイヤーを組み合わせることで、防衛側が攻撃者よりも先手を打つことが可能になります。」(出典)

今回初めて詳細が公開された「Agentic Vulnerability Discovery Harness(AVDH)」は、この理念を実現する内部ツールです。AVDHは、複数の専門エージェントを順次連結し、各フェーズが完了してから次のフェーズへ進むウォーターフォール型のアプローチを採用しています。これにより、モデルの非決定的な振る舞いに起因する予測不能性を低減し、コード分析の有効性を大幅に向上させているとのことです。

AVDHの実世界での実績とセキュリティへの貢献

AVDHは、過去10ヶ月間の運用で顕著な成果を上げています。特に注目すべきは、企業リポジトリの盗難に関わるインシデント対応において、わずか2日間で100を超える真陽性の重大な脆弱性を発見したことです。

これは手動レビューに必要な時間の数分の一で達成された結果であり、その効率性には驚かされます。うちのスクリプトにもこんな機能が欲しいと感じますね。

MandiantはAVDHを大規模な環境で活用しており、数千万行のコードを分析し、数千のパイプラインを実行して数万の検出結果を生成しました。その結果、広く使用されているWeb拡張機能やオープンソースプロジェクトで数十の割り当て可能な欠陥が発見され、CVE-2026-13242、CVE-2026-55803を含む12のCVEが割り当てられました。(出典)

AVDHの主なメリットは以下の通りです。

  • 高速かつ広範囲なスキャン: 大規模なコードベースでも迅速に脆弱性を検出します。
  • 高精度な検出: 誤検出が少なく、真の脆弱性に焦点を当てます。
  • 標的型シミュレーションでの有効性: 顧客のWebアプリケーションでRCE脆弱性を迅速に発見し、初期アクセスを可能にしました。

これらの実績は、AVDHが成熟した防御環境において複雑なエクスプロイトチェーンを加速させる上で非常に価値のあるツールであることを証明しています。

アーキテクチャと今後の展開

AVDHのアーキテクチャは、LLMの予測不能性を緩和し、コード分析の有効性を向上させるための「ハーネス」と呼ばれる仕組みに依存しています。Google Agent Development Kit (ADK) を活用し、一般的なエージェントオーケストレーションパターンを実装しつつ、カスタム統合やサードパーティ統合の柔軟性も確保しています。

このアプローチは、Google Antigravityで利用可能なエージェントオーケストレーション機能と一致しています。(出典)

項目 特徴
オーケストレーション Google ADKおよびGoogle Antigravityを利用したマルチエージェント連携
分析プロセス 人間による専門知識を注入した、構造化された検証ステップ
適用範囲 プロアクティブレビュー、ペネトレーションテスト、レッドチーム、インシデント対応
防御戦略 CodeMenderとの併用による二層防御も可能

MITの研究者たちは、AIモデルが大規模になるほどソース素材の記憶が薄れる現象を発見しており、生成モデルの出力元の特定が難しくなることを示唆しています。(出典)このような状況下で、AVDHのような専門的なツールは、AIが生成したコードや、AIが関与する開発プロセスにおけるセキュリティリスクを低減する上で、ますます重要になると考えられます。

OpenAIもモデル開発中のセキュリティインシデント対策として新しいセーフガードを導入するなど(出典)、AI開発におけるセキュリティ対策は業界全体の課題となっています。Claude Codeに投げてみたら案外すぐ動きそうな気がしますね。

AI時代のセキュリティ対策としてのAVDH

AVDHは、単なる脆弱性スキャナーではなく、人間とAIの協調によってセキュリティを高めるためのフレームワークです。AIの進化がセキュリティの脅威と可能性の両方を高める中で、このようなアプローチは今後のセキュリティ戦略において不可欠となるでしょう。

Microsoft Copilot Personalが自身のハッキング方法を研究者に教え、機密データを外部サーバーに送信したり、永続メモリを汚染させたりする事例も報告されており(出典)、AI自体の脆弱性や悪用のリスクも現実的です。AVDHのような堅牢な分析ツールは、AI駆動型開発環境におけるサプライチェーンセキュリティを確保する上でも重要な役割を果たすのではないでしょうか。