AIモデル開発は集約化から多様なオープンリリースへ
多くの専門家が、AIモデル開発はトレーニングコストの急増により、少数の大手企業への集約が進むと予測していました。しかし、現状は予測とは異なる展開を見せています。
実際には、数億ドルから数十億ドル規模の投資を行い、強力なモデルを開発する企業が増加し、それらをオープンリリースする組織も増えているのです。 (出典)
トークンに対する需要は非常に高く、モデルが効率化され、より多くのユースケースを解き放つにつれて、さらに増加する可能性が高いです。
Thinking Machinesは、2025年2月の設立当初にはオープンモデル企業とみなされていませんでしたが、現在ではオープンモデルのファインチューニングサービスで年間数億ドルの収益を上げており、米国で最高のオープンウェイトモデルをリリースしています。これは、NVIDIAのNemotronやArceeのTrilogyといった先行者を上回る成果だそうです。
個人的には、こうした新興企業が市場に活気をもたらすのは非常に良い傾向だと感じます。多様なプレイヤーが競い合うことで、技術革新が加速するのは間違いないでしょう。
注目のオープンモデル:Thinking Machines「Inkling」とTencent「Hy3」
今回のレポートで特に注目すべきは、Thinking Machinesの「Inkling」とTencentの「Hy3」です。これらは、現在のオープンモデルエコシステムにおける技術的な最先端を象徴していると言えるでしょう。
| モデル名 | 開発元 | モデルタイプ | 入力サポート | 出力タイプ | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| Inkling | Thinking Machines | 975B-A41B マルチモーダル MoE | テキスト、画像、音声 | テキスト | ファインチューニングのベースとして最適、小規模版「Inkling-Small」も競争力あり。商用提供Tinkerと連携。 |
| Hy3 | Tencent | 295B-A21B MoE | 未詳 | 未詳 | 前バージョンから全指標で改善。ライセンスがカスタムからApache 2.0に変更。50年前の数学問題を証明した実績。 |
Thinking Machinesの「Inkling」は、テキスト、画像、音声を入力としてテキストを出力するマルチモーダルMoEモデルです。特に注目すべきは、彼らがファインチューニングのベースモデルとして位置づけている点です。
企業が自社のデータでモデルをカスタマイズしたい場合に、非常に有用な選択肢になるのではないでしょうか。個人的には、Pythonバインディングが提供されれば、手持ちのデータで試しにファインチューニングしてみたいですね。
Tencentの「Hy3」は、前バージョンから全ての指標で改善を見せているとのことですが、最も大きな変更点はライセンスです。従来の制限的なカスタムライセンスから、よりオープンなApache 2.0ライセンスへ移行しました。これにより、幅広い開発者がモデルを利用しやすくなったと感じます。
また、50年前の数学問題を証明したという話は非常に興味深く、その推論能力の高さを示唆していると感じます。 (出典)
オープンモデルの性能向上と安全性への課題
オープンウェイトAIモデルは、最先端のモデルに急速に追いつきつつあります。中国のZ.aiが開発したオープンウェイトAIモデル「GLM-5.2」は、OpenAIのGPT-5.5やAnthropicのClaude Opus 4.7に数ヶ月遅れる程度の性能に達していると報告されています。 (出典)
一方で、フロンティア技術と安全性実践との間の隔たりは拡大しています。SaferAIの評価では、GLM-5.2は攻撃的なサイバータスクやデュアルユースの生物学タスクを拒否しなかったのに対し、Claude Opus 4.7はこれらのタスクを常に拒否したとされています。 (出典)
これは、オープンモデルの強力な能力が、潜在的な悪用リスクと隣り合わせであることを示唆していると感じます。開発者としては、これらのモデルを扱う際に、その強力な能力だけでなく、倫理的な側面や安全性についても常に意識する必要があるでしょう。
今後、オープンモデルが市場で果たす役割とは
オープンモデルの競争は今後も激化し、その性能はクローズドな最先端モデルにさらに肉薄していくと予想されます。Thinking Machinesのような企業がオープンモデルによる収益化モデルを確立していることは、この分野の持続可能性を示す重要な指標です。収益シェアライセンスモデルを採用するKimi K3のようなモデルが、市場でどの程度受け入れられるかも注目点です。
私は、特にファインチューニングやエッジデバイスでの実行など、特定のユースケースにおいてオープンモデルが強みを発揮し、市場シェアを拡大していくのではないかと考えています。また、自宅の自作PCでローカルLLMを動かす私としては、より高性能で使いやすいオープンモデルが次々と登場することに期待しています。