HORIZON—Gitを土台にRTL回路設計を自律改善するエージェント

NVIDIA Researchは2026年7月4日、ハードウェア設計を自動化するエージェント「HORIZON」を発表しました(出典)。単発のプロンプトでコードを一発生成する従来の方式ではなく、Gitのバージョン管理そのものを「経験の蓄積場所」として扱うのが特徴です。

単発のコード生成には限界があります。実際のハードウェアで動くには、サイクル単位の挙動やリセットの仕様、ビット幅、シミュレーターからのフィードバックまで正しく反映されている必要があるからです。

HORIZONは、目的・ドメイン知識・評価基準・受け入れ条件をまとめた構造化Markdownを入力として受け取ると、Gitの作業ツリー(worktree)上で設計案の作成・評価・コミットのサイクルを人手を介さず繰り返します。評価をパスした版だけがコミットされ、失敗はログとして記録され、次の試行の改善材料になります。研究チームは、評価対象のRTL(レジスタ転送レベル)ベンチマーク全件で100%の完了率を達成したと報告する一方、「エージェントによるハードウェア設計はまだ解決済みの問題ではない」とも述べています。

ASPIRE—失敗の原因まで学習するロボット制御フレームワーク

同じ週、NVIDIAはミシガン大学・UIUC・UCバークレー・CMUとの共同研究チームで、ロボット制御フレームワーク「ASPIRE」も発表しています(出典)。

  • 従来のコードベースのロボット制御は、タスク失敗時に「失敗した」という粗い結果しか得られず、原因が知覚・動作計画・接触の物理挙動のどこにあるか分からない
  • タスクが完了するたびに得られた修正のノウハウも、そのタスクが終われば捨てられてしまう

ASPIREはこうした課題に対応するフレームワークで、長期タスクを想定したベンチマーク「LIBERO-Pro」において31%のゼロショット性能を記録したと報告されています。

2つの発表に共通する「自己改善型エージェント」という流れ

項目 HORIZON ASPIRE
対象領域 ハードウェア設計(RTL) ロボット制御
学習の土台 Gitのコミット履歴 タスク失敗の原因分析
成果指標 RTLベンチマーク完了率100% LIBERO-Proゼロショット31%

対象領域はまったく異なりますが、どちらも「一度きりの生成」ではなく、過去の試行から学んで次に活かす設計になっている点は共通しています。個人開発でAIエージェントを組む際にも、うまくいかなかった経験をどう次の試行に引き継ぐかは悩みどころなので、こうした研究の実装がオープンに参照できるようになるとありがたいと感じます。