EU圏におけるApp Store手数料体系の抜本的変更

Appleは、欧州委員会との「緊密な連携」(出典)の結果として、EU圏のApp Storeに関するビジネス条件を再編しました。これは、ドイツの独占禁止規制当局による調査を受けたApp Tracking Transparency(ATT)機能の変更に続くもので、開発者向けの料金体系を簡素化し、DMAを巡るAppleと委員会の意見の相違を解消することが狙いです。

今回の発表で最も注目すべきは、これまで多くの開発者が懸念を抱いていた「Core Technology Fee(CTF)」が廃止され、よりシンプルな「Core Technology Commission」に置き換えられる点です。

従来のCTFはアプリのインストール数に応じた課金であり、特に大規模なアプリ開発者にとっては予測が難しく、コスト増大のリスクがありました。これがデジタル取引額に基づく5%の「Core Technology Commission」に変更されることで、少なくともコストの予見性は高まるのではないでしょうか。

私の個人プロダクトでもアプリストア以外での配布を検討していたので、CTFの動向には注目していました。インストール数ではなく売上ベースになるのは、ある意味で健全な形だと感じます。

新しい手数料体系と代替支払いオプションの詳細

今回の変更により、App Store内外でのアプリ配布や支払いオプションに応じた複数の手数料率が設定されました。主要な変更点は以下の通りです。

項目 旧来 今回(EU圏)
App Storeアプリ(Apple IAP利用) 30%(一部15%) 26%(小規模開発者など15%)
App Storeアプリ(代替決済利用) 不可(または複雑な条件) 20%(小規模開発者など10%)
App Storeアプリ(外部リンク決済) 不可 15%(小規模開発者など10%)
代替アプリマーケット/Web配布アプリ なし(CTF適用) 5% Core Technology Commission

特に、Apple In-App Purchase(IAP)と代替支払いオプションを並行して提供できるようになった点は、開発者にとって大きな進展です。ただし、Appleの「表示要件」に従い、選択した支払いオプションを12ヶ月間維持する必要があるとのことです。これはユーザー体験の一貫性を保つためのものだと考えられますが、開発者側からすると柔軟性を損なう可能性もあるかもしれません。

子どもの安全対策と代替マーケットプレイスの資格要件

今回の発表には、EU圏における子どもの安全対策と代替支払いに関する新しい措置も含まれています。

  • App Storeの「キッズ」カテゴリのアプリは、子どもを狙った詐欺のリスクを減らすため、外部ウェブサイトへの取引リンクを含めない。
  • 18歳未満のユーザーに対して、代替決済または外部リンク決済を使用するすべてのApp Storeアプリは、購入前に保護者の承認を求めるペアレンタルゲートを設ける。
  • 13歳未満のユーザーに対して、App Storeアプリは取引のためにウェブサイトにリンクできない。

これは、以前から問題視されていた未成年者による高額課金や詐欺への対策として非常に重要だと感じます。特にローカルLLMを自宅で動かしたりする際に、子どもが不意に操作してしまうリスクを考えると、このような保護機能は必須ではないでしょうか。我が家にも子どもがいますので、これは歓迎すべき変更です。

また、代替アプリマーケットプレイスを運営したり、Web経由でアプリを配布したりするための資格要件も拡大されました。主な資格要件は以下の通りです。

  • Dun & Bradstreetによる評価で、中程度の財務安定性基準を満たすこと。
  • 上場企業であるか、上場企業が所有していること。
  • 確立された投資会社からベンチャー資金を受けていること。
  • 公認会計士による財務監査を受けていること。
  • 政府機関、教育機関、または非営利団体であること。

これらの要件を見ると、中小規模の開発者やインディーズゲーム開発者が簡単に代替マーケットプレイスを展開できるわけではないことがわかります。特に財務安定性や監査の要件は、ある程度の規模を持つ企業に限定されるため、Appleのエコシステム全体に与える影響は、当初期待されていたほど広範囲ではないかもしれません。しかし、大手企業が参入することで、新たな競争が生まれる可能性は十分に考えられます。