Apple、OpenAIに予備的差し止め命令を申請

2026年8月4日、Appleは米連邦裁判所に対し、OpenAIとその元従業員 Chang Liu氏、Tang Tan氏がAppleの機密情報にアクセス、使用、開示することを禁止する予備的差し止め命令を申請しました。Appleは、差し止め命令がなければ「取り返しのつかない損害」を受けると主張しています(出典)。

これは、2026年7月10日にAppleがOpenAIを提訴した、いわゆる営業秘密訴訟の進展と見られています。Appleは、元従業員のLiu氏とTan氏が、OpenAIのハードウェア事業に機密製品情報を不正に流用したと主張しているとのことです。

Appleは、元従業員を介した機密情報漏洩の疑いを巡り、OpenAIに対し予備的差し止め命令を申請しました。

正直なところ、この手の営業秘密訴訟は珍しくありませんが、AI業界のトップランナーであるOpenAIが絡んでいる点、そしてAppleという巨大企業が相手である点で、かなりの注目度だと感じます。特にAppleのハードウェアビジネスに関連する情報が対象とされていることに、AIとハードウェアの融合が進む現代において、企業がどれほど知的財産を重要視しているかが伺えます。個人的には、普段からLLMをローカルで動かしたり、AIを活用した個人プロダクトを開発している身としては、知財保護のあり方がAI開発のスピードにどう影響するのか、非常に気になるところです。

OpenAI、「Appleは間違っている」と詳細な反論を展開

Appleの動きに対し、OpenAIは同日遅く「Appleは間違っている(出典)」と題したブログ投稿で公開反論を行いました。OpenAIは、Appleの訴訟を「不注意で攻撃的、そして奇妙なほど個人的」と表現し、Appleの主張を真っ向から否定しています(出典)。

OpenAIが公開した情報によると、訴訟前のAppleとの接触において、Appleの外部弁護士が2月に誤って別人にメールを送付し、その後5ヶ月間、具体的な申し立てについて何も連絡がなかったことを示しています。これは、Apple側のコミュニケーションの不手際を指摘するものです。

項目 Appleの主張 OpenAIの反論
訴訟前の連絡 正式な接触があった 弁護士が誤った人物にメールし、その後5ヶ月間連絡なし
機密情報へのアクセス 元従業員が機密情報をOpenAIへ流用 元従業員Liu氏にApple社員が退職後もファイル検索を依頼するiMessageを公開
Tang Tan氏の関与 機密情報流用に関与 Tan氏は他社の機密情報を利用しないよう常に明確に指示していたと主張

さらにOpenAIは、元Apple従業員のLiu氏が1月22日に退職した後も、Appleの従業員が彼にファイルの場所や技術情報の支援を繰り返し求めていたことを示すiMessageのやり取りを公開しました。中には、Liu氏のAppleに紐付けられたiCloudアカウントからファイルをAirDropで送るよう同僚に指示するメッセージも含まれており、Appleの従業員が3月5日になっても内部ファイルについてLiu氏に尋ねていたことが示されています(出典)。

元従業員のiCloudアカウント経由での情報アクセス問題

今回の訴訟では、元従業員が退職後も個人のiCloudアカウントを通じて機密ファイルにアクセスできていたという報告も浮上しています。The Information誌によると、6人以上の元Apple従業員が、企業アクセスが遮断された後も、在職中に共有されたドキュメントにアクセス可能であったと証言しています(出典)。これには、製品発表イベントの計画などの機密情報も含まれていたとのことです。

これは、企業における情報管理の脆弱性を露呈する事例ではないでしょうか。クラウドサービスを活用する企業にとって、退職者に対するアクセス権限の適切な管理は、重大なセキュリティリスクを回避するために極めて重要だと感じます。

退職した元Apple従業員が、iCloudアカウントを通じて機密情報にアクセスし続けていたという報告は、企業の情報管理体制に警鐘を鳴らすものです。

私自身も個人プロダクト開発で様々なクラウドサービスを利用しており、特に共有ストレージやバージョン管理システムでのアクセス権限設定には細心の注意を払っています。GCPのIAM(Identity and Access Management)など、きめ細やかな権限管理機能が提供されていますが、それをいかに適切に運用するかが問われますね。今回の件は、たとえ世界的な企業であっても、情報セキュリティにおける「人」と「プロセス」の重要性を再認識させるものだと感じます。

今後の展開と業界への影響

Appleの訴状では、現在400人以上の元Apple従業員がOpenAIで働いているとされています(出典)。この数字は、両社間の人材流動性の高さを示しており、技術競争の激しさを物語っています。今回の訴訟は、OpenAIが特にハードウェア分野でどのような戦略を展開しようとしているのか、そしてAppleがAI分野での競争力をどのように守ろうとしているのかを示す一つの指標になるでしょう。

予備的差し止め命令の審理日程はまだ決まっていませんが、この訴訟の行方は、AI業界における知的財産権の保護、人材の流動性、そして企業間の競争のあり方に大きな影響を与える可能性があります。技術革新のスピードが加速する中で、企業がどのように自社の強みを守り、同時にオープンなイノベーションを推進していくのか、今後の判例が注目されます。特にAI開発者としては、このような法的な枠組みが、AI技術の進歩やオープンソース活動にどう影響していくのか、引き続き注視していく必要があります。