Intel FoundryがFortinet SP6の製造を担う
2026年7月21日、米国のサイバーセキュリティ企業Fortinetは、自社の第6世代セキュリティプロセッサ「SP6」の製造をIntel Foundryに委託することを明らかにしました。これはIntelのファウンドリ事業にとって重要な節目となる顧客獲得であり、長らく期待されていた「実際の顧客」がついた形となります(出典)。
FortinetのSPシリーズは、ハードウェアファイアウォールに必要なセキュリティおよび暗号化操作に特化したアクセラレータを搭載したカスタムASIC(特定用途向け集積回路)です。多くのサイバーセキュリティハードウェアベンダーがx86やArm CPUのような汎用ハードウェアでアプライアンスを構築する中、FortinetはカスタムASICにこだわり続けています。このカスタムチップは、Fortinet製品の差別化要因の一つと言えるでしょう。
FortinetのSPシリーズは、ハードウェアファイアウォールに必要なセキュリティおよび暗号化操作に特化したアクセラレータを搭載したカスタムASICです。
詳細な性能や生産開始時期についてはまだ明らかにされていませんが、以前のSP5チップ(2023年発売)は、レイヤー7ファイアウォールやIPsec VPN接続で30Gbpsを超える速度を誇っていました。高度な脅威防御やSSLインスペクションを有効にした場合でも、それぞれ4.3Gbps、3.3Gbpsという高速スループットを実現しており、SP6ではさらに性能向上が期待されます(出典)。個人的には、AI時代のセキュリティ要件を考えると、暗号化処理の高速化は非常に重要だと感じています。
なぜFortinetはIntel Foundryを選んだのか?
今回のFortinetによるIntel Foundryの採用は、単なる製造委託以上の意味を持っています。主な理由として、以下の点が挙げられます。
- 高性能カスタムASICの実現: Fortinetは以前から、汎用CPUではなく、セキュリティ処理に特化したカスタムASICを採用することで、競合他社に対する性能優位性を確立してきました。Intelの高度な設計・製造技術は、この戦略をさらに推し進める上で不可欠です。
- サプライチェーンのセキュリティ強化: SP6はIntelの「Intel 4」プロセスノードを使用し、アメリカ国内の工場で製造される予定です(出典)。近年の地政学的な緊張を背景に、半導体サプライチェーンの安全保障は国家レベルの課題となっています。アメリカ企業によるアメリカ国内での製造は、この点において非常に大きなメリットです。
- Intelの高度な設計・パッケージング技術の活用: Intelは、分散型半導体設計や先進的なパッケージング技術において豊富な経験を持っています。これは、チップレットアーキテクチャによるSP6の拡張性向上につながる可能性があり、Fortinetの今後の製品ロードマップにとっても重要ではないでしょうか(出典)。
Fortinet SPシリーズの主な用途は、SD-WANゲートウェイのような比較的小規模なアプライアンス向けであり、データセンター向けの大規模アプライアンスに搭載されるNP・CPシリーズとは異なる位置づけです。しかし、エッジデバイスにおけるセキュリティ要件の高まりを考えると、高性能なSP6は非常に重要な存在になるでしょう。
半導体サプライチェーンの現状とIntel Foundryの戦略
現在、最先端の半導体製造技術を持つ企業は、Intel、Samsung、TSMCの3社に限られています(出典)。特にアメリカ国内での製造は、TSMCのアリゾナ工場が4nmプロセスでの生産を開始し、Samsungもテキサス工場を稼働させる予定ですが、依然として限定的です。この中で、アメリカ企業であるIntelが国内生産を強化し、Fortinetのような重要顧客を獲得したことは、サプライチェーン強靭化への強いメッセージだと感じます。
Intelは、これまで自社製品の製造が主だったIDM(垂直統合型デバイスメーカー)から、SamsungやTSMCと競合する本格的なファウンドリへと転換を図っています。米政府もこの動きを後押ししており、2024年半ばにはIntelに30億ドルを投じて政府機関向けのチップ製造のためのセキュアエンクレーブを設立。さらに米政府はIntel株の9.9%を取得しています(出典)。
今回のFortinetとの協業は、Intel Foundryが「実際の顧客」を得て、その技術力と信頼性を証明する大きな一歩です。AI分野でもローカルLLMの推論には高性能なカスタムチップが求められることが多く、Intel Foundryのような国内製造拠点があることは、将来的に大きなアドバンテージとなるのではないでしょうか。
| 項目 | 旧来のFortinetセキュリティチップ(SP5など) | 今回のFortinet SP6 (計画) |
|---|---|---|
| 製造委託先 | 不明 | Intel Foundry (Intel 4 プロセス) |
| 主な用途 | 小規模アプライアンス、SD-WANゲートウェイ | 小規模アプライアンス、SD-WANゲートウェイ |
| 特徴 | セキュリティ・暗号化特化のカスタムASIC | セキュリティ・暗号化特化のカスタムASIC、チップレットの可能性 |
| 製造拠点 | 不明 | 米国国内 |
| サプライチェーン安全保障 | 不明 | 強化される |