macOSアプリアイコンの歴史とBig Surでの転換点

Macのアプリアイコンは、その豊かな歴史の中で、色やライティング、立体感といった視覚的要素とともに、多様なシルエットでアプリの識別を助けてきました。特にMac OS X時代のアイコンは多くのユーザーに愛されており、その自由な表現はMacプラットフォームの魅力の一つだったと言えるでしょう。

Macアプリのアイコンは、かつて多様なシルエットを持ち、アプリの識別を助ける重要な役割を担っていました。

しかし、iPhoneOS時代から続くiOSの丸角四角形(スクワークル)アイコンとの調和を目指し、macOS Big Surでは開発者に対して丸角四角形のアイコンが推奨されました。ただし、当時は厳密な制限はなく、Apple自身もTextEditのペンがスクワークルから突き出すような、iOSとmacOSの融合を試みたアイコンを提供していました。開発者向けには、Photoshopなどでアイコンを自由にデザインできるテンプレートが提供され、スクワークル形状を推奨しつつも、任意形状のアイコン作成の可能性も残されていました(出典)。

この時期は、開発者にとって、ある程度の自由度を持ってiOSとmacOSのブランド統一を図れる、比較的良い時代だったのではないでしょうか。私自身も、自分の個人プロダクトでmacOS向けアプリを作る際に、こうした自由な表現ができるかどうかは、デザインのモチベーションに直結すると感じます。

macOS Tahoeで訪れた「スクワークル刑務所」

Big Surからわずか5年後のmacOS Tahoeでは、アプリアイコンのスタイルとフォーマットが大きく変更され、もはや任意形状のシルエットは許容されなくなりました。Louie Mantia氏は、この強制的なデザインガイドラインへの移行を「スクワークル刑務所」と呼んでいます。この変更により、公式のスクワークル形状に合わないアイコンは、システムによって強制的にマスクされたり、縮小されて背景に配置されたりするようになりました。

「スクワークル刑務所」には主に3つのバージョンがあるとのことです(出典)。

項目 特徴 影響
バージョン1 公式形状に合わない正方形アイコンが、システムによって公式スクワークル形状にマスクされる。 多くの場合は良い結果をもたらすが、意図しない見え方になる可能性も。
バージョン2 Tahoe以前のスクワークルアイコンが、システムによって縮小され、ライトグレーの背景の上に配置される。 最も物議を醸すケース。以前は推奨されたデザインが「罰則」のように扱われる。
バージョン3 開発者が自発的にアイコンを縮小し、カスタムカラーのスクワークル背景の上に配置する。 開発者がシステムに「降伏」した形。デザインの自由度が失われる。

この強制的な一律化は、開発者の創造性を大きく阻害するものではないでしょうか。特にバージョン2のように、以前は推奨されていたデザインが「容器に入れられた」かのように扱われるのは、開発者にとってかなり衝撃的な出来事だと感じます。自分のアプリのデザインが突然「古くさい」と見なされ、システムによって強制的に変更されるのは、フラストレーションが溜まる一方だと思います。

開発者とプラットフォームチームが学ぶべき教訓

Appleのこのアイコンデザイン変更は、プラットフォームを提供する側と、その上で開発する側の関係性における重要な教訓を含んでいるように感じます。プラットフォームチームは、開発者が積極的に利用したくなるようなツールやガイドラインを提供する必要があります。InfoQの記事で Lucas Hornung氏とChristian Matthaei氏が述べたように、「プラットフォームチームは多くの素晴らしいものを作るが、開発者がそれを使わない」という問題に直面することがよくあります(出典)。

プラットフォームはビジネスが理解し、開発者が実際に望むものであるべきです。

Appleのケースでは、Big Surでは開発者のニーズを汲み取ろうとする姿勢が見られましたが、Tahoeでは一転して厳格な統一へと舵を切った形です。これは、プラットフォームの整合性を保つという意図があったとしても、開発者の「痛み」を考慮しきれていないように見えます。開発者の視点から見ると、せっかく作り上げたデザインが意図せず変更されるのは、非常にストレスフルです。

プラットフォームチームは、DORA(DevOps Research and Assessment)指標のようなメトリクスで価値を測定し、ステークホルダーと対話し、隠れた問題点を浮き彫りにすることが重要だと、InfoQの記事は示唆しています。これは、OSレベルのガイドラインを定めるAppleのような巨大企業にとっても、無関係ではないと感じます。