科学技術計算では「代替不可能」という評価
筆者は、長寿命かつ大規模・大規模並列な科学技術計算アプリケーションの実装において、Fortranに匹敵する言語は今なお存在しないと述べています。C言語やC++でさえその座を奪えていないという評価です。(出典)
現時点で、長寿命かつ大規模・大規模並列な科学技術計算アプリケーションの実装において、C・C++を含めFortranに匹敵する言語は存在しない。
1957年、IBMで生まれた「世界初の高水準言語」
Fortranは1957年、IBMのJohn Backus氏らのチームによって開発されました。科学者が数式という「母語」のままアプリケーションを実装できるようにすることが目的だったといいます。
筆者自身のFortranとの関わりも、時代背景を示す興味深い記録です。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 1980年代初頭 | 電気工学の学生としてDEC VAX-11/780上でFORTRAN 77を学ぶ |
| 大学院時代 | 研究でFortran 90をCRAY Y-MP(T3D接続)上で使用 |
| 1990年代半ば | 産業界へ転じ、以降IT業界でFortranを使う現場を見なくなる |
当時、科学・工学分野で実用的に使われていた言語はLISP・FORTRAN・C・Pascal・ML・Prologなど数えるほどしかなく、まともなコンパイラが動くミニコンピュータへのアクセスも大学の計算機センターに限られていたと筆者は振り返っています。
「イメージ問題」が生む人材不足という現実
現在、Fortranを使う現場では、離職していくベテランの後任となる若手プログラマーが見つからないという声が上がっています。若い世代がこの「古めかしい」言語にキャリアを捧げることに前向きでないためです。
Fortranには、いわばイメージ問題がある。
筆者は、Fortranの現代化は「正気の沙汰とは思えない」ように見えて、実は価値があり必要な取り組みだと主張しつつも、2020年代向けにFortranを刷新することは、現時点では「儚い望み」だと認めています。
普段Python・TypeScriptを中心に書いている身としては、こうした世代交代の断絶は他人事ではないと感じます。自分が当たり前に使っている技術も、いずれ同じような「イメージ問題」を抱える日が来るのかもしれません。