4000万ユーザーを対象とした大規模訴訟が認可される

英国の消費者団体Which?による集団訴訟がついに前に進みました。2026年6月23日、英国の競争上訴裁判所(Competition Appeal Tribunal)が、Appleを相手取った訴訟の認可を下しました。(出典)

対象となるのは、2018年11月8日から2026年6月8日の間にiCloudを英国で利用していた約4000万人のiPhone・iPadユーザー。訴訟額は総額約30億ポンド(日本円で約4000億円強)に達しており、請求が認められた場合、各ユーザーは約77ポンド(日本円で約1万3000円相当)の返還を受ける可能性があります。

英国の競争当局がこの訴訟を認可したことで、集団訴訟は実質的に次のステップへ進むことが確定しました。

この決定は、特にテック企業の反競争的行為に対する規制の目が欧州で厳しくなっていることを示唆しています。EU域内のみならず、英国もまた独自の競争法執行を強化する姿勢が見られます。

Appleは何と指摘されているのか

Which?の主張は明確です。Appleは2015年以降、iCloudを競争の余地がない状態にロックイン(囲い込み)してきたというもの。(出典)

具体的には以下の手法が指摘されています:

  • iPhoneやiPad上で競合するクラウドサービス(GoogleドライブやOneDriveなど)の機能を意図的に制限
  • 無料の5GBストレージ枠を埋めやすく設計し、有料プランへの移行を誘導
  • 移行後は、英国での月額料金が50GBで99ペンス、12TBで54.99ポンドといった「割高」な価格設定を維持

Appleが自社サービスを優位に置く仕組みそのものが問題視されている、という点が重要です。

Which?のCEOであるAnabel Hoult氏は、「いかに強力な企業であっても、その地位を濫用することはできないというメッセージを送らねばならない」とコメント。同時に、「この決定は、他の企業が反競争的戦術を採っている場合にも警告信号になるべきだ」と述べています。(出典)

Appleの反論—だが争う姿勢は変わらず

Appleは当初から「この訴訟の主張は根拠がない」として反発してきました。

Appleが挙げる主な反論は以下の通りです:

  • ユーザーはiCloudを使用することを強制されていない
  • GoogleドライブやOneDriveなど、複数の代替サービスが存在する
  • ユーザーは自分のニーズに応じてサービスを選択する自由がある

同社は競争上訴裁判所の決定に「強く同意しない」と公式に表明し、上訴する方針を示しています。つまり、判決に向けた法廷闘争はさらに長期化する可能性があるということです。

2028年10月の初公判まで、まだ2年近い時間があります。

この間、Appleは訴訟内容を覆そうとさらなる法的手段を講じる可能性が高いと予想されます。

クラウドロックイン問題は業界全体の課題へ

この訴訟が象徴しているのは、「デジタルプラットフォーム企業によるロックイン」という構造的な問題です。Appleに限った話ではありません。

実は、このような訴訟は欧州全体で増加傾向にあります。EU規制当局は2024年からデジタル市場法(DMA)を段階的に適用し、Appleを含む大型テック企業に対して相互運用性の改善やプリインストール慣行の見直しを求めています。英国の訴訟も同じ文脈で理解できます。

開発者やエンジニアの観点からは、このような動きは「プラットフォーム間の競争環境を整備する」という意味で注視する価値があります。今後、iCloud・Google One・Microsoft 365などのサービス間での互換性向上や、より中立的な条件でのアクセスが求められる可能性があるからです。

対象ユーザーと手続き

訴訟の対象者については、自動的に含まれる人と手動で申告が必要な人に分かれます:

対象者の区分 詳細 期限
英国在住者 2018年11月8日~2026年6月8日にiCloud利用 2026年10月8日までにオプトアウト(自動適用)
非英国在住者 上記期間に英国デバイスでiCloud利用 2026年10月8日までにオプトインが必須
2026年6月8日以降に初利用 対象外 —

既に英国でiCloudアカウントを持つユーザーであれば、特に何もしなければ自動的に訴訟対象に組み込まれます(ただし、オプトアウト可能)。重要なのは、非英国居住者がこの訴訟の恩恵を受けたい場合は、10月8日までの期限内に自分でオプトインしなければならないという点です。

公式な登録プロセスの詳細については、Which?や英国の競争当局から今後公開されるはずですが、現時点でそれらの詳細情報がどこに掲載されるかは不明です。