Lightroom に集中投下される AI 機能—写真整理と動画生成が強化
Adobe Lightroom は今回のアップデートで特に大きな拡張を受けています。まず注目は AI 搭載の「Assisted Culling(アシスト済みカリング)」の正式ローカル です。9to5Mac の記事によれば、このツールは大量の写真ライブラリから目を開いているかどうか、ピント精度などの条件に基づいて、ユーザーが素早く写真を選別できるよう支援します。
Lightroom のアシスト機能は、大量の撮影から「使える 1 枚」を見つけるまでの時間を劇的に短縮する可能性があります。
並行して、「Select Subject version 5」 も導入されます。このマスキング機能は、自転車のスポーク部分や髪の毛といった複雑なディテールの選択が従来より正確になっているとのことです。
Lightroom Classic 向けには、さらに実用的な機能が加わっています。
- 重複検出機能:ピクセルデータを解析して重複した画像を識別し、一括削除できる
- Apple Silicon Mac 向けの Denoise(デノイズ)改善:処理速度が 最大 3.6 倍高速化。スライダーでノイズレベルを調整でき、追加の処理が不要になった
- 16 ビット HDR 画像の Photoshop ラウンドトリップ対応:編集後の往復がスムーズになる
Lightroom(クラウド版)には AI 生成系の 2 つの新機能も加わります。「Photo to Video」 は静止画から動画を生成し、B ロールやリール制作に活用できます。
また 「AI Sharpen」 は、Topaz Labs のノイズ対応シャープニング技術を Lightroom に統合したものです。エンジニアの方で個人プロジェクトの画像処理を自動化したい場合、こうした機能の API 化が将来あるかは注視する価値があります。
動画編集・モーショングラフィックスの利便性向上
Premiere Pro と After Effects も、編集作業を加速させる機能が複数導入されました。
Premiere Pro の新機能(出典)は以下の通りです。
- Global Audio Mute:アプリ全体のオーディオを一度にミュートできる
- Marker Search:色や名前で開いているプロジェクト全体からマーカーを素早く検索
- Channel Blur・Gradient・Noise FX:スライダーで細かく制御できるエフェクト群
- Stock Panel Checkout:Adobe Stock アセットを Premiere 内から直接プレビュー・ライセンスできる
- 3D Spinback / Slide トランジション、オブジェクトマスキング、単語単位のキャプション
After Effects は AI ベースの 4 つのロトスコーピング機能 を新たに搭載しました。オブジェクト選択、クイック選択、選択ブラシ、エッジ精密化の 4 つで、複雑な映像素材からの要素抽出がかつてより容易になっています。
AI ロトスコーピングは、手作業では数時間かかる作業を数分に短縮する可能性があり、モーショングラフィックスの制作効率が大きく変わる可能性があります。
さらに After Effects は以下の強化も受けています。
- Displacement Map による表面の深度追加
- 3D モデル・メッシュ・テキスト・シェイプレイヤーへのシネマティック Depth of Field 適用
- パラメトリックメッシュの Scripting API:複雑なシーン制御がよりプログラマティックになる
- Illustrator からのペーストが改善
- SVG のネイティブインポート(編集可能なシェイプレイヤーとして)
SVG のネイティブ対応は地味ですが、Web デザイナーや開発者が After Effects を活用する際の相互運用性が向上することを意味しており、実務的には重要な改善です。
Photoshop と Illustrator—生成 AI の統合と古い機能の置き換え
Photoshop には 「Reflection Removal(反射除去)ツール」 が新たに加わりました。このツールは、ガラス面などへの映り込みを自動検出し、別レイヤーに配置したうえで削除または可視性調整ができます。ポートレートや製品写真の補正における自動化度が大きく高まります。
Illustrator の注目機能は 「Concept to Vector」 です。スケッチやラフ画、さらにはビットマップ画像をベクター化する際に、従来の Live Trace と比べてより洗練されたコントロールが可能になります。デザイナーの方にとって、手描きの概念図を数秒で実装可能なアセットに変換できるのは、制作スピード向上に直結します。
| 製品 | 主な新機能の特徴 | AI の活用度 |
|---|---|---|
| Lightroom | 写真の自動選別・重複検出・動画生成 | 高(Assisted Culling・Photo to Video) |
| Premiere Pro | エフェクト強化・マーカー検索・キャプション | 中程度 |
| After Effects | ロトスコーピング自動化・SVG 対応 | 高(AI ロトスコーピング) |
| Photoshop | 反射除去 | 中程度 |
| Illustrator | Concept to Vector | 中程度 |
業界の流れを読む—Adobe と AI ツール群の関係性
このアップデート波は、Adobe が 生成 AI とアシスト機能をクリエイティブスイートに深く統合していく戦略 を明確に示しています。特に Lightroom の AI 機能群(Assisted Culling・Photo to Video・AI Sharpen)は、単なる「お役立ち機能」ではなく、クリエイターの意思決定と作業フローそのものを再定義するツールと言えます。
同時に、参考記事でも指摘されているように、AppleInsider は「このアプローチがクリエイティブコミュニティの一部と対立していることも事実」と述べています。AI に頼りすぎることへの警戒感や、学習データとしてのクリエイターの作品利用への懸念が存在します。
個人的には、これらの機能がオプション・アシスタント的な位置づけに留まり、クリエイター自身の裁量が最優先される設計になっているか、今後も注視する必要があると感じます。ローカル LLM を自宅で動かす開発者の観点からすると、これのような企業製品がどこまで「透明性」と「カスタマイズ性」を保つか、という課題は業界全体の重要なテーマだと考えます。